「食事の風景」

「碇君、今日のごはんは何なの？」

レイが楽しそうに、食卓の椅子に腰かける。

「アジだよ。この時期は脂がのっておいしいんだよ、綾波」

レイに負けず楽しそうにテーブルに皿を並べるシンジ。
シンジは、脂がてかてかと光る、こんがり焼けたアジを３つテーブルに
置くと、キッチンにとって返して生のままのアジを持ってきた。

レイは、急にあまり面白くなさそう口をとがらす。	

「あたし‥‥‥魚、嫌い」
「そんな嫌な顔しないでよ」

といいつつシンジはニコニコしている。
シンジは、生のアジをテーブルの脇で行儀良く待っているペンペンの前の
皿にいれる。ペンペンは途端に食らいつく。

「さあ、僕たちも食べようか」

シンジが食卓につく。
レイは、それに合わせて、ご飯をよそっている。

「いただきます」
「いただきまっす」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いただきます」

レイは文句は言ったわりに、ていねいに食べている。

「綾波、どう？」
「‥‥おいしい」
「でしょ。それに DHA とか栄養もたくさんあるんだよ」
「うん‥でも‥‥」

レイは一瞬、黙る。

「なに？」
「骨‥‥が面倒‥‥」

シンジは苦笑いする。

「あれ、大きな骨以外無いと思うけど‥」
「ほんと？」
「う、うん」
「もし小骨があったら、責任取ってデートしてくれる？」
「え？」

驚くシンジに、レイは思いっきり甘える目線で

「‥‥だめぇ？」

‥攻撃にシンジも頭に血が上ってしまう。

「いや、その、‥‥‥その‥」

ガチャン

食器をテーブルに叩きつける音が響く。

「うきぃぃぃぃぃいいい、いーかげんにしなさいよ、あんたら！」
「ア、アスカ‥」
「まったく、たまにはご飯でもたかってやろうと遊びに来てみたら、
  いちゃいちゃいちゃいちゃと、あー、うっとおしいっ」

アスカが頭をかきむしる。

「アスカってば‥」
「あんたらぁぁ、いっつもこんなことやってんのっっ？」

一人興奮するアスカに対して、シンジは照れながら、

「‥ま、まあ‥」

レイはアスカの様子を気にした風もなく、じっと見ている。
アスカはため息をつくと、

「はあ。そりゃ、ごちそうさまっ！」

レイがぼそっとつぶやく。

「‥‥‥まだ、ご飯、残ってるわ」
「そういう意味じゃなわよっ」

アスカはこれにこりて２度とタカりに来なかったという。