「赤髪倶楽部」
それは、地方紙の片隅に載った小さな広告に始まった。
赤髪の女の子大募集
当店では、クリスマスキャンペーンのＰＲガールを
募集しています。サンタの赤服に映える美しい赤、
または茶髪のあなた、いますぐご応募を！！
【応募資格】茶または赤っぽい髪の健康な若い女性
【応募方法】1. プロフィール 2. 自己アピール ‥‥
「ねえ、アスカ。これ、知ってる？」
昼休み、教科書を机の中にしまっているアスカのところへ、ヒカリが新聞の
切抜きを持ってやってきた。
「なに？ ヒカリ」
「とりあえず読んでみて」
アスカはヒカリから切抜きを受けとると、まじまじと読む。
「‥‥‥‥」
「‥ね、アスカにぴったりじゃない？」
「‥‥‥‥」
アスカはしばらく考え込んでいる。
ヒカリが様子を伺っていると、突然ヒカリの手を取り、
「これよ、これっ！」
「へ？」
「これよアタシの求めてたものは！」
「‥‥ア、アスカ‥？」
「使徒はぜーんぶ倒しちゃったし、エヴァに代わるアタシの才能を生かせる
場所を探してたんだけど、これよこれ。モデル、‥‥アタシの美しさを
生かすにぴったりの仕事ね‥‥」
アスカはうっとりと手を組む。
「そんでもって、美少女の噂が噂を呼んで、やがてはマスコミに‥」
「‥そんなに都合よくいくかな‥」
ちょうど側に来たシンジが冷静なコメントを述べる。
「うるさい」
ボカッ
アスカに殴られ、頭を抱えるシンジ。
「いてて。なんだよ、お弁当持ってきてあげたのに‥‥」
「余計なことを言うからよ」
アスカはシンジの手から自分の分の弁当箱を取る。
「‥‥‥‥‥‥」
シンジと一緒に昼飯を食べるべくシンジの机の前にイスを持ってきて
座っているレイが、アスカを睨む。
アスカはそれに気付くと、ふんと横を向く。
「‥でもヒカリ、なんで赤い髪なの？」
「‥‥あ、これ？」
「まあアタシには都合いいけど‥」
アスカの髪の色は赤である。（コミックス版は金髪かもしれないが‥）
「ほらサンタクロースって赤地の服を着てるじゃない。
だから髪の色も赤だと見栄えがいいからじゃないかしら」
「そうかしら？」
「うちのクラスにも脱色して茶色の子がいるけど、やっぱりアスカが一番
ぴったりじゃないかしら」
「ふー‥ん。でもこれって‥」
アスカはレイを向いて、
「‥‥まるで誰かさんを排他するような条件ね‥」
しかしレイはシンジと弁当を食べ始めたので聞いてなかったようだ。
「アスカ、あまり綾波さんの髪のことは言わない方がいいと思うわ」
レイが自分の髪のことを気にしてるのかヒカリには分からないが、
委員長としてクラス内にいじめなど起きないよう気をつけねばならない。
「はいはい、わかってるわよ」
アスカは、ヒカリは気を使い過ぎるのよねと思いながら、記事を読み直す。
「‥‥あ、写真の撮影地は海外なんだ」
途端、アスカが目を輝かせる。
「らぁっきぃ！ ふふふふ‥‥。ネルフの方も落ち着いたし、旅行とかに行って
みたかったところなのよね」
「私たちだけ修学旅行に行けなかったし、‥それに日本に来て以来、ここから
離れてどっかに行ったのって箱根の温泉ぐらいだもんね」
「そうそう、今度の日曜日あたりに服買いに行って、あと髪も‥‥」
と一人ではしゃぐアスカ。
（‥‥でも、まだ決まったわけじゃないのに‥‥）
とヒカリは思ったが、水を差すのも悪いと思い、中途半端な笑顔のまま
黙っていた。
◇◇◇
そして、数日が立った。
そのカフェテリア風の店は、つい最近、ほんの半年ほど前に出来たばかり
だったが、手作りアイスやケーキやワッフルやあんみつなど甘いものが
メニューに目白押しで、中高生の女の子でいつも賑わっていた。
その店の奥にある、機能的だが殺風景な部屋で「赤髪倶楽部」の面接が
行なわれていた。部屋には、書類審査をパスした数人の女の子がスチール
イスに座っていた。
女の子はだいたい10代から20代ぐらい。茶髪から「赤毛のアン」並の真っ赤
まで、いろんな髪の子がいた。その中に、アスカもいた。
「ここはお嬢様っぽく、上品にいくのよ‥‥」
そっと目を閉じ、もの静かな美少女を演じる。
こういうところはソツがない。
正面には、面接を担当する男がテーブルを挟んで座っていた。
30歳前後の若い男で、こういったことに慣れてないのか盛んに書類を
ひっくり返して読み直している。
「‥ええ‥‥時間ですが‥‥もうひとり来るはずなのですがちょっと遅れてる
みたいですのでもう少し待ってください‥‥」
アスカの横には、誰もいないイスがひとつ。
（ったく誰よ、ルーズな女ねえ‥‥）
アスカは自分の同居人を思いだし、いるのよねえこういう女、などと考えていた。
そこへ廊下をばたばたと走る音が近付いてきて、ドアが開いたかと
思うと、軽い声が響き渡った。
「すいませんーん、ちょっち遅れちゃいましたー。葛城ミサトです」
アスカはイスごとこけた。
◇◇◇
「碇君‥」
レイが放課後、帰り支度をしているシンジに声をかける。
シンジは教科書などをカバンに放りこみながら、すまなそうに謝る。
「ごめんね綾波。今日も用事があるんだ」
「そう‥‥」
レイは悲しげに小さく言う。
「じゃあ、ごめん！」
「‥‥‥うん、またあした」
シンジは踵を返すと、走って教室を出ていった。
レイは名残惜しむようにじぃっ見つめていたが、やがて自分で帰り支度を始めた。
最後の使徒を倒してから、もう半年。
これまでは、レイとシンジはいつも一緒に帰っていた。
しかし、ここ数日はシンジが用事があるとかでどこかへ行ってしまう。
シンジが何も言わない以上、自分が敢えて詮索する必要はない。
レイはそう考えていたが、日を重ねるにつれだんだんと不安になってくる。
レイはシンジの後をつけるべく決意すると、シンジが向かったであろう
方向へ歩き始めた。‥‥が、シンジの姿はとうの昔に消えていたので、
レイは途中で歩みを止めた。
「‥‥‥碇君‥‥‥」
◇◇◇
一方、面接室。
「‥あら、アスカじゃない？」
髪を脱色したのか茶色にしたミサトが、床のアスカに声をかける。
「‥‥な、何でミサトが‥‥っていうか、その髪は何よ！」
「何って、見ての通りよ」
「‥ったく自分の歳を考えなさいよ」
「アスカ、嫌なこと言うないでよ。アタシはまだ20代のなのよ‥」
「‥‥いー根性してるわね‥‥」
「それよりアスカ、あんた学校はどうしたのよ」
「休んだわ」
「ちょっと何よそれ」
「あのね。わたしは大学出てるのよ。義務教育に付き合う義務は無いわ」
「矛盾してるわよ」
「あの、お知り合いのようですが、お話は後にしていただいて‥」
申し訳なさそうに声を挟む担当者。
「「あ‥‥」」
とりあえず、早くもアスカのお嬢様路線は崩れた。
◇◇◇
レイはネルフ本部へと足を運んだ。
マヤとリツコが自動販売機の前でインスタントコーヒーを飲みながら、
休憩をしている。そこをレイが通りかかった。
「あら、レイちゃん？」
マヤが気付いて声をかけると、レイも足を止めゆっくりと振り向く。
「あ、でも今日はテストの日じゃないわよ」
「いえ、そうではありません」
「‥‥あら、じゃあ本部に何か用なの？」とリツコ。
「碇君の居場所を探すために来ました‥」
「シンジくんの？」
マヤは笑顔で答える。
「シンジくんなら、今日は来てないわよ」
「いえ、保安部の方に碇君がどこにいるか教えてもらおうと思って‥」
「でも今は、あなたたちチルドレンの監視はしてないわよ」
リツコが答える。
「ええ‥でも駅から市外へ出たかなどはわかるはずです‥」
「まあ、それぐらいなら‥」
「では失礼します‥」
レイは向き直ると、歩き去る。
「先輩、レイちゃんって直接、保安部とアクセスできるんですか？
私のセキュリティレベルでもそんなこと出来ないのに‥」
「そうね‥‥あの子、いつの間にそんな権限を持ったのかしら‥」
リツコとマヤはレイの通り過ぎた方を見つめるのだった。
◇◇◇
再び、面接室。
ようやく自己紹介と簡単な質問が行なわれていた。
「はい、どうもありがとうございました。
次は、‥‥惣流・アスカ・ラングレーさんですね」
「はい」
「惣流‥‥‥ラングレー？」
「？」
面接官が何かを思いだそうと考え込む。
「ああ、たしか、ネルフのセカンドチルドレンの‥」
「ええ‥‥そうですけど‥」
アスカにしてみれば別に隠すことでもないので、そう答える。
担当者は慌てて履歴書らしき資料をパラパラとめくる。
「そ、そうですか‥‥。あ、葛城さんもネルフの方なんですね‥」
「そうです♪」
ミサトは愛想よく答える。
アスカがじと目でミサトを見つめるが、気を取り直して尋ねる。
「あの‥‥ネルフだってことが何か関係するんですか？」
「いや、別に支障ありません」
冷汗を書きながら答える。
「あ、もしかしてネルフが軍隊だからですか？」
「い、いや分かってますよ。武器や設備はともかく所詮素人集団だし、軍隊
だとは思ってませんよ」
「‥‥‥‥さらっとひどいことを言われたような‥」
ミサトがつぶやく。
「あはは、いや、その‥‥」
「‥‥まあ、確かそこいらの軍隊よりは技術的にも人員的にもレベルは上ね」
「そんなところが簡単に停電にさせられるほどセキュリティが低くて
どーするんのよ。まさか相手の方が上だったなんて言わないでしょうねえ。」
アスカがじと目で指摘する。担当者は胸をそらして
「はっはっはっは。ネルフとは年季が違いますからねえ」
「え？」
「は？」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
アスカ、ミサト、担当官の間に沈黙が訪れる。
「‥‥‥‥‥‥‥えー、冗談はこれくらいにして、それでは‥‥」
担当者は大きな冷汗をかきつつ早口に話をすすめるのだった。
◇◇◇
面接が終わったとき時刻はすでに夜になっていた。
ミサトとアスカは他の女の子と一緒に、店の従業員口から出てきた。
「‥‥どうなってるのよ」
「さあ‥‥」
アスカの問いは、もちろんネルフの関係者だと分かった途端に態度が
変わったことを言っている。が、ミサトも分からないので答えようがない。
「ぜーったい、あれは変よ。何か隠してるわ」
「そおねえ」
「ぜーったい、怪しいわよ」
「そうねえ」
などとしゃべりながら、裏口から出てきて通りまで歩いてくると賑わう店の
表側が目に入った。
「アスカ、せっかくだからなんか食べていきましょうか」
「‥当然ミサトのおごりよね」
「当たり前でしょ。子供からお金を取らないわよ」
ミサトはふと時計をみて、
「あ、もうすぐ閉店時間みたいね」
「大丈夫、まだ間に合うわ」
折角のミサトの勘定持ちの機会を逃すものかとアスカはさっさと店へと
向かう。その時、入口近くの茂みに隠れて、こっそりと店の中を伺っている
レイに気付いた。
「ん、ファースト？」
ミサトも気付く。
「レイじゃない！ なーにやってんの？」
ミサトに声をかけられて、レイが振り向く。
「‥‥‥葛城三佐‥セカンドチルドレン‥」
「あんた、何あやしい行動取ってんのよ。もしかしてお金が無いの？」
レイはかぶりを振って、
「‥違うわ。碇君を探してるの‥」
「は？」
レイは、第三新東京市のあちこちに広がった保安部の情報網を利用して
シンジの居場所を探していること、そしてこの店にいるらしいことを
突き止めていた。
「ふーん、バカシンジをねえ‥‥。
どーりで似合わないところにいると思ったわよ」
アスカにしてみれば、レイが街のどこかへ出歩くなんてことは考えられ
なかった。もっとも実際その通りなのだが。
「ここは知ってるわ」
「ほーお。優等生もこんなところに来るとはねえ‥‥」
「‥‥ここは、戦略自衛隊が作ったビルだもの」
すべての使徒を倒した後、ネルフは公式には、活動を制限させられた。
戦自による監視のため第三新東京市内に作られたのがこのビルであり、
そのカモフレージュに、カフェショップを営業していたのだった。
当然ネルフの上層部には知られており、レイも知っていた。
「へえ‥‥」
「なんでミサトが知らないのよ‥」
「そういうのは諜報部の仕事だもん」
「なによそれ」
「だって管轄外だし〜」
「そういう横通しの悪さが組織を悪くするのよねー」
「う‥‥なに知った風な口きいてるのよ！」
などとミサトとアスカが口論してる間もレイはじっと奥を見つめたまま
動かない。ふいにミサトがレイに尋ねる。
「‥で、シンジくんは？」
「わからない‥‥‥」
「そんなの入ってみるしかないじゃない。ほら、いくわよ！」
アスカに引きずられるようにして店に引きずりこまれるレイ。
「いらっしゃいま‥‥‥な、アスカ、それにミサトさん！」
なんとレジに立っているのがシンジだった。
レジ辺りはちょうど死角で見えなかったらしい。
◇◇◇
レイとアスカとミサトは、どかっと窓際の席に座った。
「‥あいつ、いつの間にバイトなんてはじめたのよ」
「シンジくんお金が欲しかったのかしら‥」
「よかった‥‥‥」
「でもなんで隠すのよ！」
「さっきも注文を取るとそそくさと奥に行っちゃったうし‥‥」
「ネクタイ姿のシンジくんのかわいかったわねー」
「碇君に嫌われてなくて‥‥‥‥」
三者三様、それぞれ勝手に喋っている。
「でもなーんかひっかかるのよね〜。バカシンジと戦自ってさ」
「‥‥‥‥‥」
アスカは考え込む。
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「わかったわ！」
アスカが叫んだ。
「彼ら戦自は、特定の誰かをみつけるためにあんな広告を出したのだとしたら‥‥」
「誰かって？」
アスカは一旦間をあける。
「人探しをしている戦自、謎の行動をとるシンジ‥‥」
「僕はそんなんじゃ‥」
ちょうど、アスカの注文したレモンティーとショートケーキのセットと
ミサトの注文したアイスコーヒーとピザセットとレイの注文したトマト
ジュースを持ってきたシンジが口を挟む。
アスカはシンジを一瞥し、
「この２者の共通点は‥‥」
と意味ありげに間をあける。ミサトがはっとして、
「そういえば‥‥戦自の‥」
「そう‥‥霧島‥‥マナよ」
じぃーーっとレイが立っているシンジを睨む。
「あ、綾波‥い、いや、あの」
じぃーーーーーーー‥‥
「だ、だから‥」
たじろぐシンジに、アスカは腰に手を当てて勝ち誇った表情で、
「ふふふ、考えてみれば単純な話ね」
含み笑いをするアスカ。
「彼ら戦自はこの近くに潜伏した霧島マナを探していたのよ。それで、
あんな赤髪の女の子の募集なんていう不自然きわまりないことをしたのね」
そしてシンジに向き直り、
「シンジ、あなたがこの頃、学校が終わるとすぐにどこかへと消えている
ことはわかってるのよ。どこへ行くのか。それは、霧島マナのところね。」
ビシっと指をさす。
「ふ‥‥。この完璧な推理。もう言い逃れは出来ないわよ！！」
「シンジくん、そうなの？‥‥」
「碇君‥‥」
シンジは大きく首を振る。
「ち、違うよ。だいたい、なんでマナが出てくるの‥‥」
何か言おうとするアスカをレイが制して、
「碇君‥‥‥‥」
「‥‥‥‥綾波‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
レイにまばたきもせずにじぃっと見つめられては、シンジは降参するしかない。
「う、‥‥‥わ、わかったよ。
本当はもう少ししてから渡そうと思ってたんだけど‥‥」
がさごそとポケットに手をいれると紙のケースに入った２枚のチケットを
取り出した。
「綾波、まえに温泉に行ってみたいって言ってただろ？」
レイはちょっと考えてから答える。
「‥‥ええ。第８使徒の時、わたしだけ行ってなかったから‥‥」
「だからこれ、草津温泉の招待券なんだ‥」
「‥‥これを‥私に‥？」
シンジは照れて真っ赤になっている。
「うん‥‥‥」
「‥‥シンジくん、それでバイトしてたの？」
「いや、実はこれケンスケから貰ったんだ」
「相田から‥？」
「なんでも沖縄に出かけるとかで３日間バイトの代役をしてほしいって
言われて‥‥」
「その招待券をあげる代わりの交換条件ってわけね」
「‥そうなんだ」
「そういえば最近相田のやつ学校休んでたみたいね。‥‥
存在感薄いから気付かなかったわ」
ひどいことを言う。
「シンジ君アルバイトってはじめてでしょ？ 大変じゃないの？」
「うん、初めはよく分からなかったけど、もう慣れてきたから‥‥」
「何事も経験だからね、がんばんなさい」
「はい、ミサトさん」
内心ミサトにまで隠していたことをすまなく思っていたシンジは
ミサトの言葉に感謝した。
しかしレイはシンジを見つめたまま、
「‥‥碇君、どうして教えてくれなかったの？」
眉をひそめてシンジに問う。
「あ、ごめん。隠してたわけじゃないんだ。綾波を驚かそうと思って‥‥」
慌てて弁解する。
「‥‥‥‥‥」
「綾波‥‥あの、怒った？」
「‥‥‥‥‥」
レイは考えていた。
やがてレイはシンジを見上げると、自然な微笑みを浮かべた。
「いえ。ありがとう、碇君‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
シンジは照れて固まってしまった。
◇◇◇
面白く無さそうにふてくされるアスカと、にやにやとみつめるミサト。
ミサトがチケットを取り上げて
「あれぇ、シンちゃん。これペア券なの？」
「え、‥‥は、はい。そうです」
「だめよ、レイと二人っきり、なんて！」
「そ、そんなこと、か、考えませんよ」
あわよくばと考えていたシンジだが、それは言えない。
「ふーん。じゃあ、誰がレイといくの？」
「そ、それは‥‥アスカ‥は行かないよね」
「あったり前でしょー。誰がファーストなんかと‥‥」
「やっぱここは保護者たる私でしょ」
にまっと笑いながらミサトが胸を張る。
「葛城三佐‥‥減給されたいのですか？」
「う‥（この子にそんなこと出来るのかしら。いや有り売るわね。歩くネルフの
トップシークレットなんだし‥）‥‥。」
「‥‥」
「あはははは。ま、いいでしょう」
「ちょ、ちょっとミサト！」
「よく考えたら私はちょうどその頃、南の島で写真撮影だもんね」
「三十路女がよく言うわ。それはあたしに決まってるわよ」
◇◇◇
その頃、元戦自の工作員たちは。
「‥今日ネルフの奴らが来たんだって？」
「いやあ焦ったよ。てっきり例の停電の仕返しに来たのかと思ってさ」
「今更‥か？」
「お前はいいよ、あの時作戦に参加してなかったんだから」
「まあな。そういえばちょうど使徒が来たんだったよな」
「それでネルフがかなり苦戦したらしくて、根に持ってるって噂なんだぜ」
「ふーん、でどうするの」
「あの二人か？ もちろん落とすさ。ネルフの連中と関わるとロクなことが
ないからな」